[兵站戦線2673]

homefrontとは「銃後」という意味で、あえていえば「兵站」と云いましょうか。小島祝平氏曰く、川柳は正直に詠む。ええ恰好しよ、思うのは川柳やない。川柳のいのちは、真実(ほんま)や、ほんまのところにユーモアが出る。うそはあかん。短歌ブログ;http://ameblo.jp/oyajipoem 俳句ブログ;http://blog.livedoor.jp/kigai_bow/

二千六百七十三年三月短歌自由詠

2/26・・・・4

かさぶたに埋もる感性乾かされ月光の中開かれ疼く

鬱々の影は伸びゆく己がじし日々に暮れゆく曲がり角見ゆ

己が身のえぐり出さる純情を雨降り晴るる日々に曝せよ

血の中に干からぶ痛み浸しつつ心臓ねぶる舌の刻印

 

3/01・・・5

三月菜昼も暮れつつ雨びたる痴漢報道に安倍氏の写真

出し抜けの映像流れ予定的謝罪を用意ふざけた理屈

 

野菜屋の拡声器から肉声が雨を乗り越え宣伝をする

金曜日けふの時間は雨紛れ音源遠く春も遠のく

眠たいと思つた時間過ぎ去つて構いはしない政治的慰藉

 

2/28・・・10

かたつむり一人寝ふたりふすま越しもういいかいと呼びかける春

つくづくと若きのことば春花のうつろふ色の浅き嘲り

今をしも春のなごみをひさかたのあめのオルフェウスともつながりに

おおさかの思い出いくつ春の朝のれんをくぐる立ち喰い蕎麦屋

水仙が我が世の春と咲き咲いて五丁目の畠桜木の岸

奥底に沈むかなしさひきあぐる努力なきとき春虚しかる

わが海の岸辺にもやう古舟を沖に漕ぎ出で春に眠らん

浅きことこのうえなくて春寂し未だ触れざるこころのゆえに

積もりゆく海嶺の頂きの春メイドインジャパンもあるらしと

潔くカーテンを引きモニターに春を打ち込むこの春のうた

 

3/01・・・20

春紡ぐ春粥ぐ人木下闇人生時間切り売る人よ

通せんぼお金がなくて出てゆかぬそんな日もあり雲飛んでゆく

おひさまが灰色雲に照り映えて朝の大気を刻む春天

ひむがしの空だけが開けひむがしの青空遠く輝きをりぬ

 

この春もいろいろあつて元気だと言へる幸せ噛みしめてをり

安心の要素と聞いて照れくさく定期メールの日々は続くよ

青雲の見えない日にも春は萌えパーカッションはリズムを刻む

春雨はもやり山家は雲に入り午餐ゆるりとジャズを聴きつつ

一旦は雲上がりたりさり乍ら春の時雨は鬱々と降る

踏み越えてゆくしかない船端を春の実感新卒の人

泥臭いタールが媚びてゐる肺を風に曝せよ春遠い人

深海の泥として見よ依存症ニコチンタールアルコールの春

場違いな説明文はカメラの外に場違いの人春の花

しからずんばと思い切りひん曲げるマスゴミ目線思いやる春

 

パラパラと音が波打ち三月菜三寒四温けふは寒かな

はずはずと思いあぐねて振り返りや北将軍がどつかと坐る

おずおずとかたつむり来てわれに問ふわが季節未だし眠りたし

慣用の表現忌みて五七五付ける七七思いの丈を

ポリープが頚動脈にあると見えいつもと違ふ私がそこに

沈丁花春もやふ人坂道にかすかな匂ひ日にあてられて

 

 

3/02・・・21

暗がりに慣れていた冬かたつむり二月尽来てなお春知らず

17一枚ぬくし上着脱ぐ薄暮近きも春の黙想

はりつめた私を脱いで春のうたのたりかうたり漣の上

なにげなくストーブの赤なつかしく思へてゐたり二月尽く夜

わたくしの知らぬ花の名悪茄子どうやら君は意地で健気で

春ならぬあはれ曇天慎太郎手を伸ばしつつからかわれたり

はや咲いてる白木蓮図書館の書棚の死角もう七分なり

息を吸ひハトの死がありそれゆえに春の黙想おのづからあり

竜舌蘭といふ花がとどかない奈落の淵に息を吸ひ吐く

 

はらかいてみたり一人で酔ふほどに声も荒うなりひとりぐるぐる

ひとりをり辛さはわかるばつてんかひとりぐるぐる回つてどがん

なしてかと 腹掻くわけにいかんじやろ?腹ば括つて頭ば冷やせ

 

スクスクと春みちすすむ野は蕪れて一つ覚えの軍歌を歌う

実害がないから偏見を持つといふこと問ひ問はれ疑はず

又踏絵七月の参議院選あばきだされた愚劣な手口

するすると襖を開けて御座候 喉をからして無実を叫ぶ

日教組害毒流しあはれなり絡め取られて真実見えず

 

ひとりでに離れ離れにいる人を思ふてゐたりふたりなのだと

腹這いてタバコを吸ふてゐる時も中洲の道を歩いてゐたり

友達がゐてもそれだけなんだよと君に話してみてもそれだけ

ポリープの話を君にしないのは心配の種ひろぐのみゆゑ

 

3/03・・・10

切り取つた風景の外風景は無限にあれど神にはあらで

仮借なき人生の際さりげなく置かれた風土そこに住みたり

紛れなく流離の涯を知らずして我が人生は過ぎてゆくなり

混沌の岸辺を歌ひ補陀洛の山路を吟じて天空の際

一杯の水を乞ひゐてありがたく水に救はれ天に救はれ

夕暮れの雲より吹かれ雲を見る西北渡る灰色の雲

灰色の影も反転すれば白西日吸はれて影と相成る

あけやすい夜はどこまで伸びてゆくまひるの睡り自律神経

窓の奥賛美歌となるヒップホップはさざめいて暮れに入りゆく

流されてバラッドが似合ふ午後の風絶え間ない人群れて散り散り

3/04・・・9

あてつけの顔予定され不謹慎予定謝罪の朝ズバTBS

 

はたはたとはためきつつも日の丸は海をただよふ椅子に黙礼

 

春を攻む狩人浜に野に山に変奏曲の襲撃パタン

流氷の下をくぐればクリオネの変奏曲よ天国に舞ふ

草の沖春たけなはに「変」を問う一狂生の日常事象

春きても代はり映えせぬ一日ぞ変人の世辞世情疎かる

 

忌憚なきコメント欲しいわが歌にうつつの宴しばし微睡む

流し雛イベントとして騒がれるこの逆さまの世事を嘆かん

ひとがたに穢れを移し流し遣るその真実を思ひ起こせよ

 

3/05・・・6

暖かく寒くもありて岩堰の流れ落つ水うたかた断へず

うたかたの春の気分はのどけくもながるる水は畑をうるほす

 

野に光充つれど風に柔らかき刺あり少し肌寒きかな

モニターを眺めてゐると時のすぎゆくを忘れて遠い人なり

暇はこれ無味で無臭の劇薬か宗教論争果ては戦争

宗教を論じることの不毛さは戦争よりも隣人の壁

(塔短歌会提出歌)・・・10
生きるとは切ないものだすれ違ふ想ひは縒れて交差する宙

ズムズムとキィを叩いてはじまりぬワガ人生のけふの壱ページ

みつけたよ間違えた手提げの中のお豆腐の下ギュつてなつてた

血の中に干からぶ痛み浸しつつ心臓ねぶる舌の刻印

かたつむり一人寝ふたりふすま越しもういいかいと呼びかける春

深海の泥として見よ依存症nicotine tar alcoholの春

竜舌蘭といふ花がとどかない奈落の淵に息を吸ひ吐く

ポリープが頚動脈にあると見えいつもと違ふ私がそこに

腹這ひてタバコを吸ふてゐる時も中洲の道を歩いてゐたり

はたはたとはためきつつも日の丸は海をただよふ椅子に黙礼

 

(「かばん」提出歌)・・・8

忌憚なきコメント欲しいわが歌にうつつの宴しばし微睡む

はらかいてみたり一人で酔ふほどに声も荒うなりひとりぐるぐる

なにげなくストーブの赤なつかしく思へてゐたり二月尽く夜

泥臭いタールが媚びてゐる肺を風に曝せよ春遠い人

鬱々の影は伸びゆく己がじし日々に暮れゆく曲がり角見ゆ

仔鯨は母に諭されお別れを古城に言ひてぐんと潜りぬ

ダークブルーホールの中を覗きたい心臓とか小脳でなく

スクスクと春みちすすむ野は蕪れて一つ覚えの軍歌を歌う

 

 

3/08・・・6

道端の風景拾ふ拾はれた風景の外ちぎれた夕日

影だけが尾を引いてゐるゆふげしき写真の外は雪が降つてる

逝きし人その面影が生きている他人の空似そつと覗いて

灯火をそよとともして香をたく揉まれてゐたり友の寝姿

みなみ風中途半端な春ごろも日陰探して歩いてみたり

ちさき子もをみなご多くマスクして花粉対策おろそかならず

 

3/09・・・8

ライバルよ暮れゆく浜辺二人だけハルモニックの翼ひろげん

春雷の声を聞いたかトドロキを三百六十五日の夢

夢ありてサザンクロスの炎たれ俳諧でなく一行詩たる

 

人の世の勝ち負けどこにあるのやらフラメンコ手を拍つギターの音

初期化するウインドーズの中にあるデータを拾いまたやり直す

爆心地平和公園じゃありませぬ今は芝生の残された壁

背伸びして若い人練る器買う将来気負う人の生きがい

ことさらに歩きにくくする言葉を棄てに東シナ海に行くの

 

 

3/11・・・4

いつぷんの黙とうがあり冥福を祈りてゐたり震災忌なり

喪いし風景の繰り出し繰り出され町にも野にも人は帰らず

重し石やたら苦になるそのやうな小石ひとつをわが身に仕舞ふ

図書館で何冊も借り一冊に満足すればそれでよからう

 

3/12・・・5

ひつかかる動詞の前に主体あるこの構造を砕いて進め

三月はそのとつかかり忘れたり雨であつたか晴れであつたか

フォークランドの投票は沖縄の帰属問題まで跳ね返る

投票で日本帰属を決するかとんでも野望かんで反日

空はガス状の温室の上にかぶさり問わず語りの太古を紡ぐ

 

3/13・・・5

踏切も電車もなくてふるさとの四季はだれかと分かち合ひたし

飛びつきり上等の顔をしてみるいつか来るおまえさん迎へるために

二人寝て一畳半のこれつきり旅の疲れは汗に流そう

時間よとまれたしか昔に見たテレビ矢沢栄吉歌つていたよ
http://www.youtube.com/watch?v=CUG_-epiM1g
ストップ・ザ・ワールドその思いだけいただこうノスタルジック・メモリアル・デイ

3/14・・・5

五七五と七七にある抒情性一方にある変奏の群れ

省略の程よい調べ主語は抜く冒頭の呟き主よ来たれ

若干の希望これ見よがしに立つ子猿ふんと国家の論理

超国家歩いて猿はモノ申す美しい風富士の山影

春しのぐ寒さの響きあふ道を物見する人とどまらめやも

3/15・・・5

ずうんずん上半身が寒気する銅鑼の響きにひとりまどろむ

喉が干るつばを飲み込むまた戻る空咳ふたつ昼の慨嘆

咳こもるからだ脱け出しなみだ原春の日はたり椿ほろほろ

 

ひらひらとバスと一緒に付いてくる心地よい風電車抜き去る

ふつきれた時間たゆたふ夢の口瓦が小波雲が大波

 

3/16・・・5

やさしさと魂の道ひかり野の中で混ざって手をつないでる

一年をみとせにも読みがてら君は時を超えて人をも愛す

酸素欠乏を父はただされ週に二度通院しては酸素補給す

産卵のたびごと修羅は甦り殺戮劇はかつてギリシャの

トラウマとなつてゐたるや恋劇は花園壊すスサノオの如

 

3/17・・・6

りきまずにいまできることあせらずにありがとうそれだけをいだいて

あいしてるそのことばからはじまつたいきがいとなりじんせいとなり

ありがとうそういえることむねはつてあすをしんじるひとでありたい

どこまでもしんじてつれてゆけるひとありがとうとはわたしのことば

たびびとはまふゆのみちをゆめを追ひフェニキスのうたやまばとのこえ

 

肉厚の風船みたくなめらかなこの状況を打ち開かんと

 

3/18・・・3

さらさらときたり日は射すとこしえに耳塚の青淨め果てたり

のびやかに土鳩は樞【ルビ:くるる】啼き真似てさらさらさらときんいろのみづ

 

井戸端に人はいこいて春日差しふうらふうらと風に湯浴みす

 

3/19・・・7

眠たくて眠りの底に純白の靄かかつてをり言葉閉ざしぬ

ふかぶかと眠りの底に沈みおり揺れて煥発する人醒ます

 

掌に鶯の声受けて豆腐屋の喇叭は谷を出て入る

世はなにもさくら桜と騒がずも咲き並めてをり青空の下

ひさかたに劇画手にして得たものはぶっぱく血あり饐えた臭いす

どひゅつしゅつ心棒抜かれ倒れこむどれもこれも別世界なんだ

滑らかな挙措ではじくねキーボード僕にはとても息つづかない

3/20・・・5

 

歩く歩く歩く小学校まで明日から一人で通ふのだ

抵抗戦線異状なし蟻塚定時報告アンテナおろせ

明日からちちはは畑仕事あり学校とは一人で行くもの

毎日が練習だよ雨も晴れもいつになったらボク晴れ舞台

短歌が一番自由詩に近づけるその本番実現してる

 

3/21・・・5

力無き正義は無効あてどなき真空斬りをどこに求むる

偽りのなさんが神話語るまい変わり得るべき時代を語れ

つつがなく投薬だけは欠かさずに左の肩の異状は問はず

この穹を自在に翔る翼もてシンビジュームの花びらに立つ

石蕗を剥き甘煮に仕立つ母の味五島の津より春を戴く

 

3/22・・・5

ありふれた街にあふれるネオン塔どこまで行けど輝いてゐる

あやふやな記号めかしたパスワード通せんぼして私にたかる

あべこべの案内図手に戻り道キーワード見つけて角曲がる

開かずの間飛び降りてくる猫の目に血走る夜光虫の残骸

綾とりの毛糸持ち込む定休日ひとり遊びに飽きたら掃除

 

3/23・・・5

土曜日のひんやりとしたビルの陰振込終えてぼんやり歩く

はつとして右手の後ろバス停まる信号横にバイク割り込む

雨あがりボサノバの似合う街かど乾いた道の信号変わる

西脇病院の桜満開すただただみとれ時計を覗く

だらだらと下る坂道傍らにつつじつぼみを膨らませてをり

3/24・・・5

春あかねけふは見れぬわ桜靄【さくらもや】遅れ遅れに耶蘇の鐘来る

抽斗【ひきだし】に陶皿入れて整理する机の上は本が散らばり

倦怠を慰むるものなきわが前にただモニターのみが白く開けたり

かたちなすキーボード独り付き添ひてわれと感応しては歌なす

水彩の絵のやうなイラスト持つてきて主題練りつつ一首ひきだす

 

3/25・・・5

船笛を二度鳴らしゆく客船の水跡すがる長崎の鐘

暦よりすつとばしてや春花の散りゆく夜光列車の汽笛

黒く濡れ修羅場の中に光る道スローモーション前のめる影

たかだかと歌まつぴるま春のうたトランペットが夜を奏でる

飛び急ぐシンコペーション春ぞらに刻まれてをりベースとピアノ

 

3/26・・・5

何千の雲の厚みか月見えずひとりよがりの朧夜桜

ひとりでに言葉うまると思はずも沈黙阻む恋の悪戯

さかしらに言葉重ねて白良浜月は満ち干る夜の緘黙

困しみて記憶の錆を鍵に変へいつでもいいと言はせぬ誓ひ

新しい船には若い水夫がと古い歌など唄つてをらうか

 

3/27・・・5

花散らす小鳥の群れに小ぬか雨何とはなしに心途切れて

酣春に綻ぶ【ほころぶ】生の眼差しを抱きとめきれず理性ときめく

濡れながら桜の下を歩みきて弾む心音笑えぬ少女

不揃いのことば囀り【さえずり】喧し【かまびすし】蜜を吸ふのか虫を食ふのか

腹這ひて畳のごみを睨んでも花は散りゆきうたは創れず

3/28・・・7

どうとでもしてくれモード夏気分早すぎちやつて困つてしまふ

夏あたま紹介状もない夏がやつてきました表通りに

苛立ちを抑へて一人あの時の気持を確かめたくてそこに

それはただ突然のその場限りの心の揺らぎあるいは逃避

たそがれてカルチャーショック小説に感情移入してしまふ癖

魂を忘れてしまふ日常のありふれた感情持てあます日々

どうしてもこれじゃないとという感じ出せずじまひですれ違ふ「時」

3/29・・・7

天空のきわに来たれり春山路補陀洛の森カヲスの岸辺

 

時として威張り散らして風を切るそんな巡査は今風でなく

ふるさとを古里と呼ぶほかにどう呼ぶべきでせう見えてゐるのに

ふるさとは一軒の屋敷でもありそれから周りあたり一面

未来とか過去の世界がすれ違ふBigコミック時代を見せる

この腰の痛みは非常識である気圧の変動であらうとも

ふるさとは一基の墓ということもありうべきこと原発被災地

 

3/30・・・7

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